「鳳雲様は唯一の、祥星様の同母弟だったからの。付き合いこそは深かったが……今は、誰もおらぬ」
ここも静かになった、と、風に揺れる髪を抑えて、柳太后は呟いた。
(先々帝の、同母弟……それが、翠蓮の慕っていた父)
真実は違うと知ってからも、ずっと、翠蓮の中で父であるその人を思い出して―……ふと、一年ほど前の記憶に引っかかる。
「―黎祥」
「ん?」
「私、まだ、勉強不足だから……気づかなかったんだけど」
鼓動が、騒がしい。
酷く、熱く、脈を打つ。
思い出すのは、黎祥に瓜二つの―……。
「黎祥のお祖母様は、異世界よりのお客様の……高理美?」
「?、ああ。お祖父様が深く、愛された人だ。先々帝の母、つまり、私の祖母に当たる人で間違いないが?」
「彼女にはさ、先々帝とお父様……鳳雲様以外に子供はいらっしゃった?」
赤い瞳で、皇族の端くれと言った。
黎祥と自分が血が繋がっていることの方が衝撃的過ぎて、忘れていたけれど。
『父親から聞いたことは無かったかい?私と弟……君の父君の母は、異世界よりの客人だったってこと。帰る方法もなく、業波帝に見初められてね。他にも、高位の妃は沢山いたにも関わらず、寵妃として、業波帝が亡くなるまで傍に―……』
―あの人は、そんなことを言ってなかったか。

