「―翠蓮様」


花の香りに包まれて、軽く言葉を交わす。


そんな空気の中で水の玉が現れると、白華と桂鳳が現れた。


「……何かわかった?」


翠蓮たちの間の空気が変わる。


桂鳳は流雲殿下に気づいていながらも、緊張した面持ちで口を開いた。


「亡くなっていたのは、現皇帝陛下の妃の一人でした」


「……黎祥の、妃の?」


「―……はい」


重々しい、頷き。


「ただ、今までに弑逆された現皇帝陛下のお妃様方とは違い、一度も陛下と言葉を交わしたことはありません」


「……黎祥が、忘れているだけではなくて?」


「あの記憶力おばけが忘れるわけないですよ、李皇后様」


流雲殿下からの横槍に、桂鳳に視線を投げると。


「黄家出身の、黄充儀というものです」


冬の寒さのせいで、池が氷漬けになっていて……見つからなかったそうだ。


ということは、放り込まれたのは凍りつく前。


「……翠蓮が、下町にいた頃だな」


白華の声で、やはりそうか、と思う。


そうでないと、遊祥を産んでから強めた気づかれないくらいに綿密な罠をどうやってくぐり抜けたか、疑問が残る。


(罠と言っても、飛燕たちが、だけど)


つまり、避けることなど不可能に近い。


神を欺くんだから。