「―お姉様っ!」


後ろから声をかけられて、振り向く。


現れた呉徳妃は、先程とは違う披帛(ヒハク)を身につけていた。


桃花の咲き誇った、春らしい金紗の披帛。


「遅くなってごめんなさい」


「大丈夫よ。それにしても、綺麗ね」


「あ、これですか?―褒めていただいて、嬉しい限りですわ。私、裁縫が得意なんです。お姉様に褒めていただけると、創作意欲が増します」


可愛らしい笑顔。


優しく頭を撫でると、幸せそうな笑みを返されて。


「あ、そう言えば、先程、蘇貴太妃様にお会いしましたの。何か言われませんでしたか?」


気遣うような言葉は有難いし、確かに嫌味は言われたけど……そのあとの彼女の様子を思い出すと、何も言えなくて。


「大丈夫ですわ」


「本当ですか?」


「ええ」


「なら、良いのですが……あ!僭越ですが、お姉様とお茶をすることも、私の夢でしたの!お付き合いしていただけますか?」


「ええ、良いわよ。けど……そうね。先程、陛下からのお呼び出しがあったみたいだから、明日でもいいかしら?ごめんなさいね、花を見せて頂こうと思ったのに……」


「明日、ですか?」


きょとん、とした呉徳妃。


その様子も、注意深く見守る。


でも、まぁ、なんて言うか、こんな子に何かができる気もしないけど。