◆
「―それで、呉徳妃を待っているの?」
「ええ。そうしたら、殿下を見かけるんですもの」
「ハハッ、だって、綺麗だったから」
―無邪気な、笑顔。
海棠を見上げて笑う流雲殿下は、端正な顔を柔和に和らげている。
「向こうにはね、百合もあるんだ」
「やけに、お詳しいのですね」
「うん。だって、革命で傷ついた庭園を手入れするように手配したのは、僕だから」
「流雲殿下が……」
「そだよ。意外だったでしょ?」
印象が違いすぎて驚くが、顔的には花が似合う人である。
「ここは、誰でも花が愛でられる庭園になっているだろう?春の庭が、宮の近くにあってよかったよ」
どれほど前の時代かは知らないけれど、時の皇帝が寵姫のために作った四季の庭園があった。
その庭園は春夏秋冬で作られており、寵姫はとても喜んだそうだ。
そのひとつの春の庭園は、春の花が存分に集められたもので、蘇貴太妃の宮である緑宸殿の近くにある。
身体が弱い流雲殿下は最近、久々に喀血してしまったらしく、外へ出られない生活を続けていると、黎祥から聞いた。
「体調の方は大丈夫ですか?」
「うん。……いつもの事だからね」
「無理をなさってはいけませんよ」
「ハハッ、気をつけるよ」
嘘っぽい笑みを浮かべた流雲殿下は、
「翠蓮、夏の庭とかは見た事あるかい?」
と、話をずらすように尋ねてくる。
「拝見したことはありません。でも、遠目でなら、冬の庭は」
「冬の庭―宵冬苑(ヨイトウエン)かぁ。雪が積もっている時は、本当に綺麗だよね」
「ですね。今度はゆっくりと拝見したいものです」
「黎祥に頼んでみるといい。……後宮がもう少し落ち着いていたら、季節の宴もあるからね」
「季節の宴ですか?」
「うん。父上の時代はよく合ってたんだ。先帝の時代は、毎日が宴だったけど」
吐き捨てるように言った流雲殿下。
「―それで、呉徳妃を待っているの?」
「ええ。そうしたら、殿下を見かけるんですもの」
「ハハッ、だって、綺麗だったから」
―無邪気な、笑顔。
海棠を見上げて笑う流雲殿下は、端正な顔を柔和に和らげている。
「向こうにはね、百合もあるんだ」
「やけに、お詳しいのですね」
「うん。だって、革命で傷ついた庭園を手入れするように手配したのは、僕だから」
「流雲殿下が……」
「そだよ。意外だったでしょ?」
印象が違いすぎて驚くが、顔的には花が似合う人である。
「ここは、誰でも花が愛でられる庭園になっているだろう?春の庭が、宮の近くにあってよかったよ」
どれほど前の時代かは知らないけれど、時の皇帝が寵姫のために作った四季の庭園があった。
その庭園は春夏秋冬で作られており、寵姫はとても喜んだそうだ。
そのひとつの春の庭園は、春の花が存分に集められたもので、蘇貴太妃の宮である緑宸殿の近くにある。
身体が弱い流雲殿下は最近、久々に喀血してしまったらしく、外へ出られない生活を続けていると、黎祥から聞いた。
「体調の方は大丈夫ですか?」
「うん。……いつもの事だからね」
「無理をなさってはいけませんよ」
「ハハッ、気をつけるよ」
嘘っぽい笑みを浮かべた流雲殿下は、
「翠蓮、夏の庭とかは見た事あるかい?」
と、話をずらすように尋ねてくる。
「拝見したことはありません。でも、遠目でなら、冬の庭は」
「冬の庭―宵冬苑(ヨイトウエン)かぁ。雪が積もっている時は、本当に綺麗だよね」
「ですね。今度はゆっくりと拝見したいものです」
「黎祥に頼んでみるといい。……後宮がもう少し落ち着いていたら、季節の宴もあるからね」
「季節の宴ですか?」
「うん。父上の時代はよく合ってたんだ。先帝の時代は、毎日が宴だったけど」
吐き捨てるように言った流雲殿下。

