「そうだわ!お姉様に見せたいものがあるの!」
「見せたいもの?」
「ええ。私が育てている花なんですけど、とても綺麗に咲いたのですよ!」
「それは是非、見てみたいわ。見せてくれる?」
「はい!」
楽しそうな笑顔を浮かべた呉徳妃は、
「私の宮にあります」
と、翠蓮を導く。
「―ついて行くのですか?」
後ろから蝶雪に聞かれて、頷く。
「見てみたいもの」
すると、困った顔をされて。
「ほどほどにしましょうね」
先程の報告のこともあって、翠蓮も蝶雪たちも気が張っている。
とりあえず、警戒は緩めないまま、彼女について行こうとすると、
「ごめん、碧晶(ヘキショウ)。私、用事があって……」
と、泉賢妃が花見を断ってきた。
「用事?珍しいんだね、美枝」
「ごめんね、必ず、埋め合わせするから……皇后様も、本当に申し訳ありません」
「用事があるのなら、仕方が無いわ。―またの機会に」
微笑んで別れ、呉徳妃の後ろをついていく。
不思議だ。
朝からの報告は間違いないはずなのに、それに比べて、後宮内が静か過ぎている。
「あら、やだわ。忘れ物をしてしまったみたい」
周囲の様子を眺めていると、ふと、そんなことを言った呉徳妃。
「ごめんなさい、お姉様。先に、私の宮に向かっててもらえるかしら?」
「ええ、分かりました」
恐らく、蝶雪が場所を把握している。
頷いて、蝶雪を見ると、案の定把握済みらしく、頷き返してくれた。
「―あら、李皇后様」
そんな本当に頼りになる蝶雪たちを従えて、呉徳妃の宮・雪花宮(セツカキュウ)に向かう道すがら、今度出会ったのは……。

