「黎祥の、今の時代が冷武だから……その前が晋熙、その前が龍炯、その前が業波で、その前の人でしょ?彩陽帝は」


「そうそう。黎祥と翠蓮の祖父の父親」


「うん……」


混乱するけど、まぁ、大丈夫。


「彩陽帝はね、それは素晴らしい王だったんだけど、そんな彼の父親は自死したよね?」


「うん……そう書いてある」


「理由は」


「最大の寵姫が、焼け死んだから……?」


「そうそう。後宮放火事件が起こったのはその時期で、その焼け死んだ寵姫もまた、異世界からのお客様」


「……」


「意外と、ゴロゴロといるもんだよ。あちらの世界で、命を捨てようとした人間なんて」


志揮の一言で、歴史書を捲る翠蓮の手が止まる。


「命を、捨てる……?」


すると、志揮は悲しそうに笑って。


「僕はよく知らないけれど、捨てる意味もないのに、捨てなければならない状況に追い込まれたものたちを、神様達は救ったんだって。この世界で生きることを与えて、それで……生きる意味を見つけられたか、見つけられなかったかは、話が別だけど……焼け死んでしまった寵姫も、翠蓮のお祖母様も、生きる意味を見つけたんだろうね。信じられる"愛”っていうのを、見つけたんだ」


「……」


信じられる"愛”……そう言われた時、頭に浮かんだのは、


黎祥の顔。