「―翠蓮、僕が説明するよ。ほら、座って」


頭を抱えていると、現れた志揮。


この国の歴史書の基本とも呼べる、【宵始伝】の作者である彼の話ほど、貴重なものは無い。


椅子に座り、彼は筆を持つ。


「まずね、さっきの倒れた妃の件については合ってた。泉賢妃は命を取りとめたけど、死んでしまった妃は翠蓮の耳に入っていなくても、かなりいたんだ」


「そうなの?」


「うん。とりあえず、両令姫は毒で……白淑人は錯乱して、多くの妃を刺殺して、自らも喉を掻き切って、死んだ」


想像すると、えげつない。


「泉賢妃を殺せと命じたという疑いをかけられて、捕らわれていた幽英姫は分かる?」


「ええ、覚えてるわ」


「実は、彼女も死してしまってね。調べた結果、毒殺だった」


「……つまり、真犯人の身代わりにされたってこと?」


「そうかもね」


人が死んでいるというのに、この人たちは笑ってる……そのことに少しゾッとしながらも、新しい御代には犠牲がつきものだという、前世の精神を思い出す。


「他にも、表貴人、白貴人、集英姫は覚えてるかな?」


「ええ。表貴人は事件の発端で……って、あれ?」


読み上げられる名前に聞き覚えがあるのは当然だろうが、ふと、疑問に思う。


黎祥の後宮に妃として入る際、学んだ事の中に。