「蘭怜は……蘭怜だけは、どうか……」
「いや、向淑妃様は何も悪くないです!私が全部、罪は背負うので、二人は……」
「若琳っ!何言ってるの!」
「だって、私が守るから、産めと言ったんです。約束を守ることは当然ですし、このことは三年前から覚悟出来て―……」
「ちょっと、待ってください?」
お茶菓子を呑み込んで、二人を止める。
「初めに言っておきますが、私はまだ、皇后では無いです。位を得ていないので、敬われても……」
「でも、陛下の第一皇子殿下をお産みになられましたでしょう?」
「いや、まあ……それはそうですが」
そこは事実なので、何も言えない。
「それならば、皇后位確定でもありますわ。恐らく、儀式の日に立后式も行われるのでしょう。……申し訳ありませぬ。そのような時に、密通の事件を―……」
「いや、だから、ちょっと待ってください!」
何だ。
向淑妃は少々、突っ走る傾向にあるのか?
人の話を聞いてくれない。
「……陛下に言って、罪を糾弾するつもりなどありません」
「え……?」
「っ、誰かを愛する気持ちは、止められないという気持ちは、よくわかりますし。その代わりと言ってはなんですが、貴女の話を聞かせて欲しいんです。……構いませんか?」
呆然とした向淑妃に微笑みかけると、静かに一筋の涙を流して、彼女は口を開く。

