「翠蓮!」


満面の笑顔で迎えられて、翠蓮は笑った。


「お久しぶりです、雪麗様」


久しぶりの、碧寿殿。


お付きの蘭花さんが無言で礼を取ろうとしたので、それを手で制し、雪麗様に近寄った。


礼を取ろうとすると、


「やめて。翠蓮の方が、身分高いのよ?」


「ですが、まだ、正式には……周囲が騒いでいるだけで、事実、位はまだ、雪麗様よりも下です」


浅絹越しに見る雪麗様は顔色はよく、この宮は翠蓮にとって、後宮最初の場所のせいか思い入れが深い。


「何言ってるの。立后式がまだだとしても、皇子を産んだんだもの。確定だわ。それに、私は罪人よ?罪人に、膝を折らないで」


懐かしい光景を楽しんでいると、そんなことを言ってくる雪麗様。


「でも、表向きでは裁かれませんわ」


雪麗様の罪は、昇華された。


民の間に広がった、極悪な存在であった栄仲興を死んだことに関して、民は心より、天に感謝したらしい。


そのことにより、大して証拠も残っていなかった彼の死は、表向きは事故死となった。


だが、例え、表向きの罪がなくなったとしても、雪麗様はその重みを抱いて、生きていかなければならない。


その重さが、一生涯、付きまとうそれが、翠蓮からの雪麗様への罰へとしたのだ。


それ以外の事件に、雪麗様は関与を考えられなかったから。


「それらは全て、翠蓮達のおかげよ。……罪をなしにしてくれただけでも、貴女を名前呼びできないのに。こんなことが露見したら、不敬罪として捕らわれるわね」


皇后として、既に扱われている翠蓮を名前呼び。


翠蓮が手紙で予め頼んだことだが、雪麗様には荷が重かったらしい。