「君が、そういう人間で安心する」
黎祥のことを考えていると、とても愛情のこもった優しい笑みを浮かべて、彼は言う。
その表情はまだ、黎祥がここにいた時―……皇帝であるということを、祥基たちが知る前の、翠蓮を見つめる黎祥の瞳にそっくりで……違和感を覚える。
つい、愚痴が漏れまくり、話の路線がズレまくったが、元はこの人の話を聞くために来たのだった。
「すいません、俺、自分の話ばっかり……」
黎祥に似ているから、つい、軽口で話していたが、この人はそんな雰囲気ではない。
貫禄に満ち溢れた、御大尽って感じが否めない。
やはり、皇族の一員だからだろうか。
「それで……用件とはなんでしょう?」
椅子を勧めて尋ねると、彼は偉く真面目な顔をして。
「覚悟はしていたんだが……紙が手に入らなくてな」
「……」
麟麗の方に視線を向けるけど、麟麗は何故か、彼の方を全然見ようとはしなくて……やはり、黎祥を思い出すのだろうか?
「紙でしたら、沢山ありますよ?」
商品とならなくなってしまった、うちの元商品だが。
ちょうど学問所だ。
持ってきて手渡すと、
「もっと、良い紙はあるかい?」
と、尋ねられた。

