「先々帝の頃は、まだ良かった。晩年、病のために一線から退いた形になったとしても、先帝の思惑を阻もうとしてくれたことは感謝している。彼は、賢王だった。ただし、現皇帝には負けるかもだけど」


黎祥は凄い。


わずか三年で、傾きまくっていた、あと少しで腐って落ちるはずだった果実を、熟した食べ頃の果実の頃まで、時を戻してしまった。


まだ甘いところがあるし、黎祥が見えない生活不備部分の報告も祥基は彼自身から頼まれているが……間違いなく、この国は最盛期を迎える。


黎祥、または、今回生まれた第一皇子の御代で。


「……現皇帝は、凄いのか?」


「政治のことについてはよくわからないが、彼が皇帝であってくれる今はこの国の民だと、胸張れる」


「そうか……君は、現皇帝を信頼しているのだな」


そう言われると、何か違う気もするが……だって、実際に今だって、時々、黎祥からは手紙がくる。


翠蓮のこととか、翠蓮のこととか、翠蓮のこととか。


我が国の王は意外と暇人なのか?と思うこともあるが、日程を聞く限り、祥基なら忙殺されるであろう忙しさだ。


先程の、結凛の店の忙しさなど比にならない。


それだけのものを、先帝は遺していったんだと思うと、黎祥を哀れに感じてしまう。


生まれ育ってきた環境の話からしても、確かに、誰かを大切に守るという感情は欠落してしまいそうな半生だった。