「隣の学問所内で、話は聞きますよ。今日は休みですから」
お祝いの日ということもあって、診療所は年中無休だが、学問所は休み。
今頃、ここに通っている子供たちもお祭りを楽しんでいることだろう。
「……しっかりとした作りだな、ここは」
感心して、興味深そうに周囲を眺める彼。
麟麗はというと、さっきから黙ったまま。
「元は、錬成所で。革命で綻びた部分を修正しただけなので、まぁ、造りは頑丈ですよ」
「そうなのか……」
「官吏志望の子供は下町に溢れていますが、確実になれる私塾には大きなお金がかかる。そこに通わせて、何十年後かの希望にかける暇があるのなら、俺達は畑を耕した方がいい。一日に食べるものにも困る中、そんな呑気なことを言っていては、餓死しますから」
「……」
「前の皇帝の時は最悪でしたよ。街中に人の骸が転がって、病気が蔓延して……戦果は近づいているのに、民は苦しんでいるのに、城では宴三昧だし」
あの時のことを思い出すと、今でも腹が煮えくり返る。
そんな愚王を倒してくれただけでも、黎祥は祥基にとって信頼に足る、翠蓮を任せられる相手だと踏んでいた。
ただし、翠蓮を幸せにするという条件は、最上の条件としてだが。

