「可愛い言うな!」


「可愛いんだもん。……秀敬殿、お久しぶり」


五歳年上なのをいいことに、蒼月をからかう流雲。


蒼月は怒っているけれど、流雲からすれば、それすらも可愛く思えてしまう。


成人間近の息子を持つ秀敬は複雑そうに笑いながらも、


「貴君は何も変わらないな、流雲殿下」


と、応えた。


ゆったりとした笑みを向けた流雲は、二人を見て。


「さて、これから、どんなふうに駒は動くだろう?」


と、問いかける。


「……後宮事件のことか」


忌々しそうに、俯いた蒼月。


「うん……。これからが、楽しみだね」


流雲の思う通り、李家の娘は皇后となった。


城下は不穏な空気など知らず、盛り上がっている。


次は、誰が動く?


果たして、第一皇子の存在は吉と出るか凶と出るか―……。


「楽しみで仕方ない」


とても妖艶な笑みを浮かべた流雲は無邪気な子供のように、城下の様子を見て楽しんでいた。