そして、目を覚ます。


次に耳に入ったのは、けたたましい赤子の声。


「―っ、李妃様!皇子でございます!聞こえていますか、翠蓮様っ!!」


天華の必死な呼び掛けに、小さく頷く。


痛く、重い身体は動いてくれなくて。


「おめでとうございますっ」


おめでとう、なんかじゃないのに。


そう言ってくれる貴女は、


泣いてくれている侍女達は、


本当に優しいね。


「―翠蓮」


「……」


ー飛燕?


目を向けると、天華から赤子を受け取って。


「この子供、少し……借りても良いか」


「ちょっ、飛燕殿!困ります、その子供は―……っ!!」


蝶雪が止めようとするから、翠蓮は手を伸ばして、蝶雪の衣を掴んだ。


「翠蓮様っ!」


「……」


大丈夫、の意味を込めて笑うと、


「…………早く、連れ帰ってくださいよ」


不満げに、蝶雪は呟く。


(龍神を睨める蝶雪って、凄いよね……)


今更ながらにそう思う。


「翠蓮様、お水でもお飲みになられますか?」


蝶雪の手を借りて、起き上がると。


まぁ、初めに見えたのは血の海。


あれらが自らの体内から出たって、信じられない話だ。