『もう、良いわよ!そんな、上っ面な言葉なんて―……』


『馬鹿なことを言いなさんな!泣き虫な貴女を置いて、俺が行けるわけないでしょう!』


『泣かないわよ!貴方がいなくても、私は―……っ』


腰を引かれる。


頬を撫でられて、優しく触れる。


重なる、二つの体温。


『…………嘘も、大概にしてください』


少し顔を赤くしたあなたは、今、どこにいますか?


この空の続く場所にいるのでしょうか。


他国に嫁いでなおも、貴方を忘れられなかった私はずっと、貴方を探しているんです。


呼んだら、すぐに駆けつけてくれると言っていたのに。


ねぇ、貴方は今、どこにいますか?


…………悲痛な叫びは、翠蓮の心を締め付けた。


目の前の女性は血塗れの布を抱いて、泣いている。


『彩苑、行こう』


『嫌だっ、どうしてっ、どうして―……っ、!』


『大丈夫だ、蒼覇はきっと生きてる!』


『っ、蒼覇……ぁ!』


お願い、帰ってきて。


貴方がいないと、私はもう、歩き出せない―……。


『もう、いい。もう、頑張らなくていい。俺がいる。俺が、こうして置いてやるから、今は、静かに休め―……』


一人の青年が、優しく彩苑の頭を撫でる。