「……君を許したわけじゃない。でもね、僕は君のことも、彩苑のことも大好きなんだ」
「……」
「だから、恨むことも出来ない。君は、僕の憧れだから」
照れくさそうな笑みを浮かべながら、首に掛けられたのは見覚えのある飾り。
それは蒼覇よりも新しく、今の自分よりも古い記憶。
幼かった自分は母と笑い合う父に抱かれて、父の首に掛けてあった、この飾りに目を奪われた。
「これで、そなたは王となった」
「……」
「我らの正式な加護を、受けたのじゃ」
嫋やかに微笑む飛燕は、本当に美しくて。
「我らを使役し、この国を良く治めよ」
首飾り―これは、蒼覇の記憶の中にも出てきた。
戦の前に、彩苑が必ず、口付けたもの。
大切そうに、ずっと首につけていた。
『姉様の、形見だからね』
寂しそうにそう言った、唯一の主は。
「そして、逢わせたい子がおる」
飛燕が背後に目を向けると、現れたのは妙齢な女性。
「―……そなたの、息子じゃ」
抱かれていた、白く小さな子。
よく眠り、女性に甘えて。
「可愛かろ?」
破顔した飛燕は神の名前にふさわしい、美貌で。
彼らは、笑っていた。

