「―貰った命を、捨てるのか」
聞こえた声に、振り返る。
静苑も対応して、目を見開いて―……その光景を見て、黎祥は息を呑んだ。
「……その台詞を吐いたのは、お前だったのか。飛燕」
月明かりの元、ゆったりと歩く影。
飛燕を先頭に、彼らは黎祥に近づいてくる。
「そうじゃ」
「……どうして、"私”に思い出させた?」
「今も昔も、あいつの味方になってあげられるのは、お前だけだろう?」
紹介する、と、そう言って、飛燕は自らの背後を振り返る。
「…………お前達は」
「そうじゃ。そなたの記憶を消したもの」
少年二人は変わらず、弓と剣を背負って。
「そなたに、これを」
首を出せ、と言われて、静苑が警戒する。
「……何のつもりか。我が主君に手を出すならば、神であろうと喧嘩を買う」
それを見た時、最初に反応したのは、少年二人。
飛燕は、
「アハハッ、良い臣下を持ったな。黎祥」
と、大笑い。
「―じゃあ、僕がするよ。それなら、安全だよね。陛下」
「「志揮!!」」
「そうじゃな。そなたなら、人の子も安心じゃろう」
「静苑殿、僕は彼らみたいに特別な力は使えません。だから、安心してください」
疑心暗鬼だったが、静苑は黎祥の前から退いて。
飛燕から何かを受け取った志揮は、いつもと変わらない……そう、昔から、昔から変わらない表情で。
「志揮、私は―……」
彼が目の前に来た時、謝ろうと思った。
思い出した、劉蒼覇の人生の中で、自分は最低なことをしていた。
志揮は指を伸ばして、そっと、黎祥の口元に押し当てて。

