「真面目に求婚したのに、虫を見るような目で見られたよ。……まぁ、あれが堪んねぇんだよなぁ」


「……まぁ、人には色々ありますよね」


幸せそうに笑っていることは結構だが、理解などできるはずもない。


そう思っていると、秀敬殿は簡単に流して。


「特殊趣味(マニアック)だと言われたんだが……そうなのか?」


「いや、会ったこと無いから分からぬ」


「?、いや、あるだろ。お前の妃の侍女だぞ?」


「……私の後宮に、何人の妃がいると思ってる」


ため息をついて、睨む。


そんないちいち覚えてられるか!


「いや、お前の寵妃だったと―……あれ?おかしいな」


「ちゃんと調べてから、そんなことは言え」


酒を煽って、月を見上げる。


もう、うんざりだ。


子供が大きくなって、この皇位を譲り渡せるようになるまで、少なくとも十五年―……


先の長さを考えると、ため息しか出ない。


「……」


盛り上がる二人の王が羨ましい。


「『許されない、恋なんてしてはいけないよ』」


ふと、懐かしい言葉を呟いた。


それを聞き付けたふたりが、


「どうしました?陛下」


「それ、お前が言うような台詞ではないな」


と、首を傾げる。