「……楚昭容が身篭っていただと?」


近い未来、自分の息子となるであろう子供を出産する女の産み月が近くなっていたある日、女官長の欧紅翹からもたらされた報せに愕然とした。


「陛下が昭容様の宮をお訪ねになられてからの日数からすれば、間違いなく、陛下の御子でございます」


今宵は迷惑をかけている隣国の王二人―蒼月と秀敬との、夜を過ごす日だった。


酒を飲み酌み交わしていた場に、彼女はやってきたのだ。


「……けれど、陛下は事に及んではおられませぬ」


間諜でもある彼女は、だからこそ、わざわざこの場にきて報せたのだ。


訪ねることはしていても、事に及んでいないことは彼女はよく知っていて、訪ねた宮の妃も分かっているはずだ。


バレてしまったら、どんな目に遭うかくらい―……。


「引き続き、様子を見よ。追って、沙汰を下す」


「御意」


紅翹が去っていく様を見ながら、考える。


もし、あちら側が行動を起こしてくれたのなら、こちらも動きようがあるというのに。


幾分、証拠がないのではどうしようもない。


「……お前も、大変だな。本当に」


下町から持ち帰ってきたばよりんを片手に、蒼月が憐れむような視線を向けてくる。


蒼月の国、神陽国は共和制の国だ。


王というものは存在こそはしているが、国の在り方を、進み方は決めるのは国民の手で決めるものであり、それを審議するのが王をはじめとした上の人間の役目。