……最近の夢は妙な現実感を一気に帯びて、旧神殿で聞かされた前世の物語を―……恐らく、淑彩苑の人生の夢を見ている。


見る度に、歳が、姿が変わっていく。


昨日見た夢では、婚礼の前日の夢。


明日、隣国の皇太子の元へ嫁ぐ、という前夜。


今日寝てしまえば、もう、皇太子の妻にでもなっているのだろうか。


怪文書を受け取って、目を通す。


「『第二皇子は、貴太妃の子ではない』……これ、流雲殿下のことですかね?」


「それ、一枚目なんだけど……間違いなくね。だって、子供じゃないのは事実なのでしょう?」


「はい」


この文書を見て、流雲殿下は何を思っただろう。


そして、蘇貴太妃は―……。


「二枚目はこれ」


「『お前は三年前』……これは意味がわかりませんね。三年……三年前が何か、大事なことを示しているのでしょうか」


「それ、黎祥兄様も言ってたわ。結局、分からず仕舞いだけど……これ、三枚目」


「『忘れるなかれ』……何を?」


「それも分からない。本当に調べれば、調べる程に分からなくなっていくわ。一体、何が、犯人にこれほどに被害を起こさせるの?」


翠蓮はある程度、事件の原因の深いところまで突き詰めかけていた。


翠蓮が怪しんでいる人は、ただ、愛する人の復讐で。


愛が絡むから、ややこしくて。


翠蓮は無言で卓の上に並んだ焼き菓子のひとつを手に取り、半分に割る。


中からでてきた手紙を手に取って、開く。


「……それは?」


両手で顔を覆って、ため息をついていた灯蘭様が気づき尋ねてくるので、翠蓮は不敵な笑みを浮かべて、それを渡した。