「……翠蓮は変わらず、私と仲良くしてくれているでしょう?だから、私はできるやり方で貴女を救いたいの。皆、翠蓮を救えるのは黎祥兄様だけっていうけど、友情が拠り所になってもいいでしょう?」


―下町から帰ってきて、直後。


前に栄貴妃様の犯行現場を目撃したことを話してくれた時、どうしても話せなかったことについて話すために、灯蘭様が龍睡宮を訪ねてきていた。


黎祥は自分が大師匠を、つまり、翠蓮の父親を殺したと気に病んでいたけれど、それは、間違いだった。


父のお節介は罪人として皇都にきてからも変わらず、言いがかりな件で処刑寸前だった灯蘭様を救ったらしい。


それが、斬首刑まで繋がってしまったと。


そして、兄様は処刑間近の時に直接、父からの遺言を受け取っていて……まぁ、結果として、父様の無鉄砲さがゆえの話だったと、翠蓮は自分の中で完結させた。


「でも……いきなり、どうしたの?眠れてないの?」


「いえ、そういうわけでは……実際、今も眠いですし」


「じゃあ、私はそろそろお暇して―……」


「いえ、ここにいてください」


「え、でも……」


「兄様とここで待っているって、約束でしょう?」


襲撃事件以来、一人歩きを禁止とされた灯蘭様は立ち上がったものの、すぐに腰を下ろして。


「そうね。祐鳳を怒らせたら、怖いし…………じゃあ、今、後宮内で出回っている怪文書の話でもする……?」


手持ち無沙汰になったのか、戸惑いげに、そう言って一枚の紙を出してきた灯蘭様。


さらっとついた、翠蓮の嘘を疑うことも無く、先に進めてくれる彼女を見て、


「そうですね」


と、笑う。