「ねぇ、翠蓮、私、いつ結婚できるかしら?」


「……え?」


祥基に怒られてから、三月(ミツキ)ほど。


今日も今日とて、宮に籠りきりの翠蓮の元に、事情を全て把握している灯蘭様が、結構重要度の高い資料を抱えて、やってきた。


「と、灯蘭様?一体、何があって、そんなことを―……」


「だって、兄様が皇帝になったって言っても、私は長公主だからね、結婚は兄様の命令通りになるじゃない?」


「えっ、そうなのですか?」


「どこの家もそんなものよ?」


貴族の家は、やはり、愛よりも権力ってことか?


それを、さも当然のように言う灯蘭長公主は、どうして翠蓮が驚いているのかなんて、検討もつかないのだろう。


「それに、私はれっきとした、皇族の血を引いている真公主だからね。他国からは色々と価値があるのよ〜人質とか、人質とか、人質とか」


「人質しかないじゃないですか!」


でも、黎祥のことだし、そんなことはしないと思うんだけど……。


「……そんな、危険かもしれないのに、結婚、したいのですか?」


それで、彼女は幸せになれるの?


灯蘭様は突っ走るところがあるけど、とてもいい子だ。


幸せになって欲しいと願っているし、彼女が幸せになるためなら、翠蓮は何でもしようと思ってる。