「………………くそ真面目が」


その時、頭に衝撃が。


ズキズキと痛むので、顔を上げると。


片手に陶器を持った祥基が、こちらを見ていた。


「わかんねぇのは、当然だろが」


「は?」


「お前と俺らの生まれ落ちた境遇を一緒にするつもりは無いし、昔から、お前は色んな目に遭ってきたんだろうと思う。そのせいで、誰もを信用しようと思っても、容易にできないこともな。だけど、惚れた女の言葉くらいは信頼してもいいんじゃないか?」


「……」


「自分の鳥籠に閉じこめて、愛せなくても幸せとか、どうせ、てめぇのことだ。考えてんだろ」


図星を刺されて、押し黙る。


「それで、翠蓮が幸せならいいが―……そうじゃないのなら、俺は翠蓮をてめぇなんかに渡さねぇよ?何なら、俺が嫁に貰ってもいい」


「っ……!」


「そこで、俺になら、安心とか言うなよ。俺はあいつを一人の女として愛してやることは出来ないし、どんなに頑張っても、あいつは一人の妹にしか見えねぇ。そんなん、翠蓮を揃いに揃って、侮辱しているのと同じことだ」


その言葉は、重く、黎祥の肩にのしかかってきて。


「お前は、どうしたいんだよ。翠蓮に、何を感じているんだ」


首元を掴まれて、黎祥はぼんやりと祥基を見返した。


祥基の強い瞳は、いつも真っ直ぐに、先を見ている。


彼のそういう所に、翠蓮が惹かれてしまいやしないかと不安になった時のことを思い出して、


「感謝しているし、まだ、愛してる」


黎祥がそう呟くと、


「なら、その本心に従っとけ。アホ」


と、返された。