こう呼ばれる時は、もう、定まっている。
先帝の娘だ。
恐らく、行方不明の第一皇女あたりか……(成長ぶり的に)。
「初めまして」
黎祥を皇帝だと認めると、腰を抜かした少女。
「おい、大丈夫か?」
祥基が寄って訊ねるも、激しく震えて、焦点が合わない。
「……お前、なにかしたのか?」
そう尋ねられるけど、身に覚えは……あるな。
「直接は覚えないが、父親は殺した」
「……それのせいか?」
黎祥が皇帝だと知っている祥基。
赤い目だし、少女の元の身分もわかっているんだろう。
現皇帝が先帝を弑逆して、皇位を襲ったのなんて語り草だし、そのせいで生活がある程度、豊かになってきた祥基には何も言えないのか、複雑そうな顔をして、少女に聞く。
少女は震えながらも首を横に振り、
「感謝、してますから……そうじゃ、なくて……」
と、震える声で言う。
「勝手に、後宮を出てきたから……特に使い道がなくても、そんなことを勝手にしたから……あ、その……」
かなりの怯えられよう。
姉の時もだったが、数年前の自分はかなり荒れていたんだと、客観的に思い知る。

