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「―……ったく、俺に何人、御大尽友達を作らせる気だ?」


祥基の家の店が市場にあると知り、奥の方で異国の書物を読んでいた秋遠と駿希を引っ張って、市場に飛び出して行った蒼月はどうやら、単純にこの国を見て回りたかっただけかもしれない。


軽やかな足取りで飛び出して行って、黎祥のことなど放置だ。


そんなことなら、連れ出さないで欲しかったのだが。


「何人って……私はまだ、蒼月しか会わせてないと思うが」


「それだけじゃねぇよ」


はぁ、と、大きなため息をついた祥基は手元に自分で用意した茉莉花茶(ジャスミンティー)を口にすると、


「―祥基さん!準備、できました」


まるで、時機(タイミング)を読んだように、入ってくる少女。


「おう。麟麗」


「ここに資料、置いときますね。鈴華もそろそろ帰ってくるそうですし、豹さんも……」


「何か手伝うことはあるか?」


「いえ!悠遠くんも手伝ってくれているし、大丈夫です」


笑顔の彼女は外套を被りっぱなしだった黎祥に気づくと、


「お客様でしたか!失礼しました!」


と、頭を下げてきて。


(―なるほど。そういう事か)


黎祥は嘆息。


目の前の少女は恐らく、先帝の子供。


「お茶のお代わりとか、いります?」


気遣ってきた麟麗という少女はそばに来て、黎祥の顔を間近で見ると、


「っ、叔父上……!」


一気に、距離を取って。