【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




「別に構わない」


「本当にか?」


「大体、どれくらいだ?」


「こんな金額、口にするのも嫌だが……大体、八十貫くらいだな」


この国の金銭事情だが、大体、一貫で千銭。


下級兵士の月給が、三貫から四貫。


李将軍ですら、凡そ、月給は二十貫。


宰相が三十貫とかだったか……そう考えると、かなり、高額である。


いや、かなりどころの騒ぎではない。


下町に生きる彼等が、ひと月生活するのに五貫あればお釣りがくるのだ。


大きな邸宅をたて、毎晩宴をしたり、妓女を呼び寄せたり、多くの妻子を抱えていた、この国の腐敗の元であった官吏の月給でさえ、二十五貫だ。


つまり……八十貫なんて、何が出来るのやら。


でも、貿易とか、海賊討伐とか、お金のことに関しても、羽振りのいい新陽国を作り上げてしまった国王の返事なんて、決まってる。


「何だ、そんなに高くないな」


……革命明け三年の、ボロボロのこの国と比べるな……。


勿論、その蒼月の言葉に大きく、また、黎祥に聞こえるようなため息をついた祥基は。


「……また、どこの御大尽だ」


と、黎祥を睨んでくる。


「そう言えば、自己紹介がまだだったな」


蒼月はそんな不穏な空気すら知らず、


「新陽国王、劉蒼月だ。よろしく頼む」


ニッコリと笑う―……ああ、祥基の視線が痛い。