「あれ、商品だろ?すまない、やめさせて……」
「いや、良いよ。父も体力の限界みたいだし、ここで店を開くことになったんだ。あれは俺のだし」
「弾けるのか?」
「まあ、少しは?」
流石、生まれた時から色んなところの文化を学んできただけある。
(確か、商人一家だったか……)
「……あれ、膝に置いているけど、弾けないよな?」
「うん。あれじゃあ、弾けない」
祥基は蒼月の元へ行くと、その『バイオリン』を持ち上げて、自身の腕に添わせるように持つと、『バイオリン』の下の方を顎と肩で挟み、その近くにあった棚から、毛の張った棒を取り出す。
「この楽器は、弓がないと弾けねぇんだよ」
その弓とか呼ばれる棒を『バイオリン』の弦の部分に擦り付けて、何とも綺麗で伸びやかな音を奏でた祥基は軽く、蒼月に指導をする。
「凄いな!」
蒼月は説明を聞くと、好奇心が沸き立ったのか、自分でも挑戦しようとする。
「―お、鳴ったぞ!」
「うん、筋がいいね」
少し、優美な音が出ただけなのに……、
「これ、欲しいと言ったら、在庫はあるか?」
とか、言い出す始末。
(こいつは本当に何のために、私をここへ連れ出したんだ)
呆れてため息をついていると、
「別にいいが、かなりの値段が張るぞ」
と、祥基は商売人の顔をするし。

