「―陛下!?」


黎祥の許可の元、蒼月も通し、真っ直ぐに龍睡宮に向かう。


早い時間からの皇帝の訪れに驚く、後宮の下女達はすぐに端によると、深く頭を下げてきて。


掃除中だったんだろうか。悪いことをしたが、それどころではない。


「陛下……っ!?」


龍睡宮の入口まで行くと、たまたまそこにいた、一人の侍女がぎょっとした顔で、黎祥を見た。


「どうなさって……」


「翠蓮の様子伺いだ。開けろ」


「え……」


戸惑いを、顔に映した侍女。


「懐妊の噂が広がっていると聞いた。危険だろう、どうやって……」


「申し訳ありません」


酒壺を持っていた侍女は震えながら、それを床に置くと、地面に額を擦り付けて。


「李妃様からの命令で、ここをお通しすることは―……」


「私の命でもか?」


「っ、特に、陛下は、と、言われて―……」


カタカタと震えた手を重ねて、けっして、こちらを見ようとしない侍女に歩み寄り、とりあえず、立ち上がらせようとした時。


「―何用だ」


後ろから、殺気。


一気に間合いを取り、蒼月もまた、距離をとる。


黎祥に刀の切っ先を向けて、隠すことの無いさっきを向けるその少年は宦官ではなさそうだ。