『え、でも、だって……ええ?』


麗宝様はまだ、未婚の身。


お母様の哀貴人が罪人として処刑され、哀家もまた、続滅されたから……確か、婚約破棄をされたのだ。


そして、黎祥の姉上で……今年、御年、二十九になられる。


龍炯は三十年の治世であり、晋熙は八年の治世。


つまり逆算すれば、彼女が生まれたのは龍炯十二年で―……そこで、とある相違が生じる。


『麗宝様と第三皇子は双子でありながら、第三皇子が身罷られた年は麗宝様がお生まれになった、六年後―……』


『見てわかるだろうが、第三皇子など、この誌面上には存在しておらず、もう一人、存在が消された子供がいる―……つまり、私にはもう一人、兄弟がいなければならなかったということだ』


驚いていた翠蓮に黎祥はそう言いながら、ため息をつく。


つきたくなるのもわかる気がしないこともない。


だって、後宮でのことも含み、いい加減、頭が痛くなってきた。


これを見ている人達だって、そろそろ、見たくなくなってきている時期だろう。


それでも、謎は謎のままにしておけない。


翠蓮の探究心が、それを許さない。


『確かに麗宝姉上が生まれた時、共に皇子が生まれていることは事実であり、亡くなったことも事実だ』


『証拠は?』


『その場に立ち会っていた、私の母の元女官―今の女官長・欧紅翹の証言だ』


『……』


それならば、確かに信憑性はある。


『でも、麗宝様は弟を殺したということで、哀貴人とは不仲だったのでしょう?もし、もしよ?哀貴人は三人子供を産んでいらして……そのうちの一人、麗宝様以外のふたりは男の子で、片方は死んでしまっていても、もう一人の男児は生きていたのでしょう?それで、どうして、麗宝様は責められてしまったの?そもそも、そのいなければならない、哀貴人の三番目の御子の皇子はどこに―……』


『それが、成桂(セイケイ)……お前に仕える、桂鳳だ』


『……………………………え?』


目を移すと、ありつき顔をしていた桂鳳。