「何度も言うよ。―私はね、君が黎祥の"幸せ”だと思う」


繰り返される、言葉。


そっと、手に触れられる。


「どうか、お願いだ。黎祥のそばに―……」


(幸せになることを、願ってる―……)


翠蓮は目を閉じ、息をつく。


そして、微笑んで。


「……考えさせて下さい」


―拒否することも、できなかった。


それだけ、苦痛に充ちていた。


桂鳳の話も聞かなければならないけれど、後宮内で毒に倒れた人達の診察にも行かなくては。


やることは多いのに、闇も多い後宮内にも疲れる。


とりあえず、心の底から黎祥の幸せを願い、自分の身を削ったような声を出す流雲殿下を、翠蓮は拒絶できなかった。