「素直に嬉しかったよ。味方がいることはね」
けれど、それが悲劇を産んだ。
順妃は毒を盛られてしまい、懐妊中に大変な目に遭った。
彩蝶様や黎祥は辺境に飛ばされた。
そして、その時期に翠蓮の母の白蓮もまた、不自然な程に姿をくらました。
柳皇太后は皇太后だったけれど、皇太后だったから、それらを止めることが出来なかった。
証拠を並べられてしまったら、先々帝のいない後宮では皇太后が一番の権力者といえど、皇宮では皇帝が一番で、たとえ養子として迎えていて、義理の息子といえども仰がなければならなかったから。
湖烏姫の息子であった先帝が、例え、皇太后が自分を養子としてくれ、そのおかげで皇帝になれたんだとしても、皇太后の思う通りに動くだろうか?―いいや、そんなはずはなく。
「何より、蘇家は李家に支えられた家みたいな感じだったから、李家の命令には絶対でね?だからこそ、尚更、蘇貴太妃は理解できなかったんだと思う。白蓮は蘇貴太妃よりも、順妃と仲良くしていたから」
あの母のことだ。
どうせ、普通にお友達ということだろう。
彼女に後宮内の情勢など関係ない。
冊立の甘さや、湖烏姫の自分勝手さ、そして、業波帝の晩年より燻っていた戦の種―……全てが混ざって、爆発。
猜疑心に溢れる、父の先々帝をはじめとして兄弟を嫌い、遠ざけ、自分に本当の愛をくれていた妃にすら目を向けず、女と遊興に耽った、愚かで可哀想な皇帝は各地で反乱を起こす起爆剤をばらまき、業波帝の晩年の悲劇を繰り返した。

