「黎祥たちが辺境に飛ばされてしまったのは、その二年後のことだったからね。まぁ、手を出しては閉じ込められて、食事を抜かれて〜の繰り返しだったから、ろくに僕達兄弟は触れ合えなかったよ。そして、そのまま、離れてしまった」
それでも、よく覚えているらしい。
黎祥の小さな背中が、自分の眼前に立ち塞がったこと。
何度目か、また、折檻を受ける寸前のこと。
黎祥に救われたらしい、流雲殿下。
「蘇貴太妃はさ、特に灯蘭に関わる時に限って、僕を怒鳴り散らしたんだ。順妃―灯蘭の母后は争いごとを嫌い、病に臥して、宮に閉じこもっていた僕の本当の母を引きずり出そうとする蘇妃たちを止めたことがあるらしくて……誰もが従う蘇家に表立って、順妃は逆らった。
それは、決定的に蘇貴太妃に真正面から喧嘩を売ったことになって……彼女は雄星を産む時に、生死の境を彷徨ったらしい」
それが、例の服毒事件。
蘇貴太妃は、湖烏姫の取り巻きだったのか。
「……彩蝶様や黎祥も、僕を守ってくれてね。優しい声で、手で、『よく頑張ったな』と、彩蝶様は頭を撫でてくれたんだ。柳皇太后だって、君の母親の白蓮だって……幸せになっていいんだよって、莉玲(リレイ)だって―……僕の母だって、それを望んでいるんだよって」
今更、何も驚かなかった。
父が、先々帝と兄弟なのだ。
母がお妃様たちと付き合いがあっても、別におかしい話ではない。

