(そうまでして、皇帝の愛が欲しいのだろうか?)


皇帝の寵愛には、それほどの価値があるのだろうか。


翠蓮には理解できない。


多くの名誉と、人を手に入れたとしても……自分の命を危ぶみながら、贅沢な暮らしのために、翠蓮は生きたくない。


それなら、心から信じられる人達と生きていく方が、きっと、何万倍も人生は楽しい。


(それとも、皇帝を、愛していたんだろうか……)


見向きもされないから、その行動に出たというのなら……かなり、湖烏姫も不憫な方なのかもしれない。


国に必要な、都合のいい妃を用意し、皇帝が子を産ませるための場所―それが、後宮。


もし、皇帝を湖烏姫が愛していたというのなら、自信があった自分の美貌に皇帝が見向きもされず、あろう事か、同じ異民族出身の念妃が深く寵愛しているんだから、悲しい話だ。


見方によっては、湖烏姫に同情できる。


(けれど、だからといって、命を軽率に生み出していいわけないし、人の命を奪っていい理由にもならない)


不当に手に入れた子供でも、愛していなくても、湖烏姫は息子を利用した事実は変わらない。


先帝が歪んでしまったのも、そこに理由があるのかも。


愛を信じられず、円皇后を一途に大切にできなかった要因は、そこかもしれないんだ。


巡り巡った輪が、少しずつ繋がる。