「でも、さっき話した通り―……彩苑は自分が死ぬことで、蒼覇が生き返ることを望んでね。お互いにお互いが生きる理由全てだったくせに、二人ともそれに気づけずに……生き返った蒼覇は嘆いたよ。彩苑に抱かれたまま、『君のいない世界で、どうやって俺に生きろというのか』と」


「……」


互いが、互いの全て―……。


「結局、蒼覇もまた、死ぬことを望んだ。彩苑が三途の川を渡る時に、手を貸してあげたいから、と」


そして、帳尻の合わなくなった、誰か一人分の人生は……たまたまそばにいた、まだ、体が綺麗だった、志揮に与えられることとなった。


「僕は死んでいたし、はっきりと正面から言われた訳では無いけれど、意識の世界っていうのかな。そこで、彩苑に筆を貰ってね、『その筆で、この国の歴史を書き続けて。いつかまた、会いに来るから』って言われたんだ」


死んでいるから、無理だと思ったと言う。


でも、志揮さんは目覚めてしまった。


そして、傷は塞がっており、自らの手にはその筆が握らされていたと。


「……長い、長い、死にたくなるような長い、孤独の時だった。覚えていなくても、逢いに来てくれて嬉しいよ。彩苑、蒼覇……ううん、翠蓮、黎祥」


押し付けられたような、永久の命。


それでも、それを守り続けてきてくれた志揮さん。


もちろん、何も覚えてないし、思い出せないけれど。


瞳に涙をためた志揮さんを見ていると、体が勝手に動いて。