「蒼覇と思いが通じ、幸せになれと仲間からは言われ、躓きながらでも、一歩ずつでも、蒼覇と幸せになろうとした矢先―……蒼覇は、彩苑を突き放した」


呑み込めない展開に呆然としていると、横から、宵始伝を差し出されて、パラパラと捲った、建国者の最終章に目を通すと、翠蓮が読んだものとは内容が違っていて。


「双龍というのはの、光と闇の白亜と儂のことを指す。けれど、本当は五龍でもあるのじゃ」


「五龍……?」


「儂と、白亜と、飛雪と、紫艶、そして―……蒼巌(ソウゲン)」


「……」


「蒼覇が彩苑を突き放したのは―……」


翠蓮の手から、書物が落ちる。


血が逆流しているような、そんな暑さに襲われる。


「……翠蓮?」


黎祥に声をかけられ、縋り付くように、黎祥の衣を握る。


「ぁ………っっ、」


悲しい。悲しい。悲しい。悲しい。悲しい。


ただ、悲しくて、苦しくて、漏れでる声と共に涙が零れる。


「……蒼覇は既に、死んでいた」


「……っぅう」


「翠蓮、どうしたんだ」


覚えてる。


記憶にない。


蒼覇なんて、知らない。


でも、泣いてる。


(貴女は―……)


頭は知らなくても、心が覚えてる。


全てを捨てて、幸せになりたかった頃の自分を―……。