「隣国に嫁ぎ、隣国の皇太子の夫と対面する時になって、故郷が焼かれた。姉も、幼い妹も、両親も無残に殺された。護衛であった蒼覇は、戻ってきた自分を守り、代わりに死んだ……でも、絶望していても、キリがない。じゃから、彩苑は国の民を弔い、隣国へと帰った。けど……隣国もまた、故郷を滅ぼしたもの達に……その時代は戦国時代と呼ばれる時代での。とてもじゃないが、平和とは言えなかったんじゃ」
聞いているだけで、泣きそうだ。
喉が熱く、その時の彩苑様の気持ちを思うとやりきれない。
「故郷も、家族も、嫁ぎ先も、頼れる護衛も、全部、全部、失った彩苑はひとり、旅を始める。行く宛がなく、心の壊れてしまったから……」
その中で、武術を磨き、もとよりある知識を糧に生きる術を身につけていった。
「孤独の旅から、二年ほどたったある日、死んだと思われていた護衛の蒼覇が目の前に現れての、また再び、彩苑に忠誠を誓い、そこから仲間が増え、旅を続け―……纏めるには、国を作るしかないと気づいた彩苑は、仲間の協力の元、やっとの思いで建国したんじゃ。ただ、大切な人を守りたくて」
「それなのに……」
「そうじゃ。翠蓮と黎祥の想像通り、仲間は戦により死んでいき、彩苑は再び、壊れそうになってしまった。彩苑が建国を決意した時、儂らは既に彩苑を慕い、彩苑のそばにいたが……いつだって一生懸命で、自分のことは後回し。立てなくなった時は、蒼覇に立たせてもらって―……憔悴した人々には、彩苑が希望だったことだろう」
懐かしむような声は、どこか寂しい。
泣きそうにも聞こえる声から、このあとの結末は容易に知れる。

