「翠蓮を抱いておれ。―少し、重いものだからな」
「重い、もの……?」
「お前が置いていったんだ。お前にも背負う義務はある」
「ちょっと待ってください。それって……」
「一体、何の話を―……」
翠蓮も黎祥も理解が出来ずに、白亜を見た。
白亜は、
「そこの二人を見ても、お前達は何も感じないのか?」
と、尋ねられた。
「何かって……とても、悲しくは思います、けど……」
まるで、死に別れた恋人同士みたいだもの。
確かに、そんな感情は抱くけれども。
「私は……とても、悲しく思う。それと……寂しい?」
翠蓮と同じように、答えを求められた黎祥がそう答える。
「悲しい、寂しい、か……」
「そういうのが元に作られたものでは無いのか?」
「……」
翠蓮もそう思ったのだが。
「……黎祥、翠蓮、よく見て。これは、人形でもなんでもないよ。時の止められた、人だ」
「え?」「兄上、一体何を―……」
「触れて見ればわかる」
そう言われて、触れたその二人は冷たくはあれど、確かに感触は人で―……。
「……まさか」
もしかして、もしかしなくても、これは。
「初代と……、建国者だと言うのか?」
黒髪、赤い瞳、そして、この立ち入り禁止の旧神殿―……。

