「ほら、君の前の記憶をあげる」
と言いながら、翠蓮の額に触れてくる。
「―っ、やめるんじゃ!白亜!!」
その時であった。
どこからか現れたのか、下町で会ったっきりであった飛燕や飛雪、飛龍に紫艶が乗り込んできたのは。
「どうして?君たちが好きだった彩苑を蘇らせるだけではないか」
「そんなことをしたら、翠蓮はどうなる!?」
「何も変わらないよ。ただ、彩苑としての人生を思い出すだけだ」
「"あの時”のことなど、思い出させてはダメじゃ!そなたはっ、彩苑を今も恨んでおるのか!?」
「"あの時”のことで悪かったのは、アタシだよ!やめておくれ!白亜!!」
「そんなことをしても、白麗は喜ばない!」
「翠蓮を傷つけるのは、ダメっ!」
必死に止める四人を見て、白亜は理解できないみたいな顔で眉にシワを寄せると、
「このままでは、志揮が孤独だよ。それでもいいと、飛燕達は言うの?」
と、コテンと、首を傾げて。
「……っ、」
「それはっ、」
「都合が良すぎるよ。彩苑の記憶に呑み込まれるようなら、この娘もそれまでということだろう。―そうだな、そこの兄ちゃん」
「っ、私のことか?」
二人の男女の様を眺め、惚けていた黎祥はつつかれて、顔を上げる。

