聞き覚えのある名前に戸惑う。
「飛燕達が、どうかしましたか?」
「飛燕という名は、飛龍という名は、君があげたのか?」
「え、ええ。頼まれて……本来ある、名前を捨てるからと」
「…………」
志揮さんはその話を聞いて、何故か、涙を零して。
「―えっ!?」
抱きつかれて、思わず、大きな声を出してしまった。
強い力で抱きしめてくる彼は、
「おかえり……」
泣きながら、震える声でそう言って。
「おかえり……?」
「おかえりっ、彩苑……」
繰り返し、建国者の名前を呼ぶ。
「ずっと、ずっと、待っていたんだよ。歴史書を書いて、君の言う通り、この国を見守ってきた。蒼覇と会えたかい?もう、悲しくない?白麗たちも、何も変わってないよ。龍達には会えた?」
続けざまの質問に、混乱してしまう。
一体、何の話か。
「……志揮、認めたくないかもしれんが、翠蓮は翠蓮だ。彩苑ではないし、記憶もなかろう」
「あ、そう、か……」
「思い出させるから、少し、待て」
「え、でも、あの記憶を……?」
「話をするのには、必要であろう?」
白亜は何を言っている、みたいな顔で首をかしげて、翠蓮に近づいてくると。

