よく見てみると、後宮書庫に仕舞ってある書物を上回るようなほどの書物があって、一角はある意味、足の踏み場がなさそうだ。
流雲殿下は興味深そうにあちこちを見て回っていて、黎祥はというと、真ん中にある二人の男女の人形に、視線を奪われていた。
確かに、目を引かれるものだ。
黒髪の白皙の女性?が赤い瞳から涙を溢れさせて、ひとりの動かない男性を抱いている。
二人とも、全身に血を浴びていて、見ているだけで悲しくなるような、そんな神秘さをもつもの。
「……彩苑?」
書物を集め切って、それを彼に手渡そうとすると、呼ばれた名前。
でも、それはこの国の建国者の名前であり、容姿からしても、全然関係性のない翠蓮は笑って、
「私は、李翠蓮です。彩苑様の子孫は、そちらにいる現皇帝陛下の淑黎祥様と、親王殿下の淑流雲様ですよ」
と、教えてあげ、書物は彼の手に返した。
「白亜」
「なに?」
「あれから、どれほどの時が経った?」
「……」
「子孫と呼ばれるものが生まれ、想いを遂げる年数が経ったのか?」
「…………長い長い時だったけれど、もう、それくらいにはなるだろうね。翠蓮が飛燕たちが認めた、女王だ」
ふう、と、ため息をついて、そう言った白亜。

