「……やけに冷え切っているな」


「私の外套を、貸しましょうか?」


「それでは、お前が冷えるだろう」


「基本的に丈夫なので、問題はありませんよ。私よりも、万民の父である貴方に何かある方が問題です」


そう言いながら、翠蓮は黎祥に外套を被せて。


「……暖かいな、ありがとう」


柔らかく瞳を歪めた黎祥を見上げていると、


「翠蓮〜、僕も入れて?」


扉の外から、そう言われて。


「流雲殿下?」


「翠蓮、一言、『どうぞ』って」


「……どうぞ?」


「ありがとう」


……意味がわからない。


でも、なにか見えないものに阻まれ、中に入ることの出来なかった流雲殿下はその一言で、簡単に入ってきて。


「陛下は普通に通れたのに……この国の王様だから?」


「いや、けれど、即位した頃に、ここに来ても入れなかったぞ」


「儀式をしていなかったから……?」


「それを言うのなら、まだ、終わってないだろう」


原因がわからず、二人で首を傾げる。


すると、先行く白亜が、


「そりゃ、黎祥の御魂が、"女王の愛した男”のものだからであろう」


と、振り返ることなく、応えて。