「あの……開いたんですけど」


軽く触れただけで、開いてしまった扉。


何もしていない、ただ、押しただけである。


「―何だ、また来たの?流雲」


黎祥と翠蓮がその不思議現象に呆然としていると、聞こえてきた声に、


「あ、白亜(ハクア)、起きてたんだ?おはよー」


と、流雲殿下は応えて。


現れた白亜という少年?は翠蓮の腰あたりまでの身長だった。


彼が小さいがゆえ、見下ろす形となってしまったが、横髪は流したままで、長い白髪をひとつに結び、背中に流している、瞳は赤く大きく、一言で言うところの美少年で。


「その二人は……」


白亜という少年は翠蓮と黎祥を見ると瞠目して、


「約束していたろ?」


流雲殿下はなぜか、そう笑う。


「連れてくるって。……違う?」


「ここの扉を開けられたのなら、間違いなかろう。ふぁ……まだ、眠い。それで?本日は何用か」


「え、やっぱ、正解?じゃあ、入ってもいいよね」


「その娘が『どうぞ』と言えば、入れると思うぞ」


なんて言いながら、当たり前のように開いた扉に触れ、旧神殿の中に入っていく白亜は、


「?、入らぬのか?」


と、翠蓮たちを振り返った。


翠蓮は戸惑いながらも足を踏み入れて、黎祥もそれに続く。