「こんなところに……分かるものがあるのですか?」


「んー、それは、翠蓮次第だよ。でもね、栄貴妃が復讐の道を駆け抜ける足を止めた今、彼女たちも止まらなくちゃ。じゃないと、黒幕も止まらないよ。傀儡であることから、逃がしてあげたいんだ。ただ、大切なものを守ろうと、仇を取ろうとしただけの、可哀想な子達なんだよ」


そう言った流雲殿下の表情は、被害者や犯人とされる複数人に心から同情していて、また、心配しているようだった。


「でもね、ここの扉は開かない」


「そんなことは……昔から、分かっていることだろう」


「そうなの?」


黎祥の言葉で、流雲殿下は旧神殿を見上げる。


「ここはね、初代が作った神殿とされているんだ。初代を守り、共に戦った戦士達が眠っているとされている。けれど、誰にも開けられない。業波帝が定めた、立ち入り禁止の瑞鳳殿も見えない不思議な防壁があるけれど、それでも、正式に皇帝となったものには、足を踏み入れることを許されているから、マシな方だよ。ただし、ものに触れることは出来ないけど……ここは、入ることすら叶わないから」


「だから、そんな、旧神殿に何の用が―……」


―キィ……。


少し苛立った声を上げた黎祥と、


相変わらず、読めない笑顔を浮かべた流雲殿下。


でも、このことに、一番驚いていたのは翠蓮で。