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「……それで、ここは?」


訪れたのは、後宮書庫。


「先帝の時代に書かれた書物、特に歴史書なら、棟家の宵始伝だけど……見て、ここ」


見せられたのは、とある見開き頁(ペ-ジ)。


「……それぞれ、帝に子供が生まれたことも書き記してあるんでしょう?この見開きがどうしたんですか」


「その年に起こった出来事、一日一日を決して逃さず、全て書き記し、後世に残されている。そんな歴史書で……例えば、ほら。ここ」


見せられた場所に書かれていたのは、一部分、黒く塗られた……先帝の誕生を示す一文。


「この、生母の部分を消したの、誰だと思う?」


すると、黎祥が


「実の母親の湖烏姫だろう。先帝が確実に王につくには、皇太后の子供である方が都合がいい」


と、言った。


「うん。じゃあ、これは?」


二十年くらい、時代を進んで。


見せられたところにある一文には、今度は。


「流雲様の、生母が……ない?」


「……」


「因みにね、高星もこうなっているんだよ。―わかる?その他は、書いてあるんだよ?罪人と、足されているだけで……ちゃんと、名前あるのに。どうして、僕ら三人の生母の名前は消されているんだろうね?」


「……」


「まぁ、先帝のことは、黎祥の推察道理だろうけどさ」


パタン、と、本を閉じた、流雲殿下は笑って。