「―そういえば、翠蓮」


「?」


「貴女、前、ここから出ていく時―……人を連れていったでしょう」


すると、翠蓮は身を震わせ、目を見開いた。


(……やっぱり)


「……その子達は、無事?」


「えっと……なんの事だか……」


「隠さないで!大事なことなの」


あの少女を、救うには。


雪麗の復讐にも、付き合ってくれた子だ。


弱くて、ただ、姉が希望だった彼女もまた、今、終わらない復讐に走っている。


「……無事ですよ」


雪麗のしつこさに根気負けしたのか、翠蓮はそう教えてくれて。


「彼女達が、それを望んだんです。命を脅かされるかもしれない環境で、これ以上、怯えていたくないと。信頼なる仲間に、託してありますから……大丈夫ですよ。それにしても、身寄りも味方もいないと言っていたから、無言で連れ出したんです。まさか、彼女たちを探している人が?」


探しているのは、双子。


あの少女の、子供だ。


「ええ、少し―……犯人のひとりは、その子達を探しているの。そして、自分の大切なものを奪った人に復讐しようとしている。……手遅れかもしれない。私だって、その子が恨む人を恨んでる。でも、後悔はして欲しくない。死んで欲しくはないのよ。幸せになって欲しいの……どうか、どうか」


希うと、翠蓮は小さく頷いて。


「任せてください。ただし、杏果の件と引き換えですよ?」


大きすぎる代償でも、いくらでも支払うわ。


だから、どうか。


ただ、幸せに生きたいと望む、復讐心を捨てられない彼女達が幸せになりますように。