「……灯蘭様」


「え?―痛っ!?」


顔を上げると、思いっきり、額を弾かれた。


「いつまで、メソメソしてんですか。らしくない」


「っ……驚いて、涙も引っ込んだわよ」


「そりゃ、良かった。痛いでしょー?父上譲りのデコピン」


「でこ……何?」


「俺もよう分からんのですが、祖母の国の文化だそうです」


「祖母……鳳雲様のお母様よね?それなら、私の祖母ということにもなるけど……高妃だったかしら?」


「話によりゃ、異世界の人だったとか」


「ええ〜何それ!すっごく気になるわ!!」


「なら、早いとこ、事件解決しません?そして、文献を焦ってみましょーよ。そしたら、何かわかるかもしれません」


「良いわね!じゃあ、早速―……」


そこで、ふと、動きを止める。


理由は、祐鳳が笑ったからだ。


「フッ、涙、止まって、いつも通りのあんたに戻りましたね」


口元を押さえて、笑う祐鳳は楽しそうで。


「俺の知っている限りでよけりゃ、祖母の話をしてあげますが。……ん。良い笑顔ですね」


祐鳳は灯蘭の顔にかかる髪を避けると、優しい笑顔を向けてきて。


「自分の選択を、罪だと思ってしまうのなら、それに苛まれる人生を送るくらいなら、その痛みも悲しみも、抱え込んでしまいなさい。そうして、笑いなさい。それが一番、貴女らしい。代わりと言ってはなんですが、俺が一生、貴女の護衛を続けますよ。貴女がどこに嫁いでも、ずっと……何なら、夫の信頼や護衛も受けてやります」


ニッ、と、笑う祐鳳は本当、いつも自分の力を過信している訳では無いけど……なんて言うんだろう。


一緒にいるだけで、元気になれる。