「どうして、そんなに怒っているんだい?翠蓮」


「っ、笑って、誤魔化そうとしないでください!!」


「どうして?僕は何も変わっていない」


「……っ」


「信じたくないかい?君のお父上を死に追い込んだのが、黎祥だったこと。―いや、そのことじゃないね。これは、祐鳳たちですら、懸命に君に隠そうとしていた話だ。この話を知ったところで、君は黎祥を責めることなどない」


翠蓮は強く拳を握りしめ、自分を―……流雲を睨んだ。


「だから、どうして、そんなに睨むんだい?僕は、"何もしていない”と言っているだろう?」


「ですが……っ!」


「君が怒りの矛先を向けたいのは、父上の仇にじゃないね。父上の仇は、既に死んでしまった。―ふむ、そうだな。君は止めたいんだろう?この暗殺劇を」


流雲がにっこりと笑うと、翠蓮は顔を青くして……そして、ゆっくりと、深く頷いた。


「それなら、まずは現状を知らないと。儀式のことも、そうだ。どうして、君たちはそんなに全貌を見ようとしない?全貌を見れば、すぐに分かることだろう。この狭い後宮だけでなく、外も……そして、世界を見ればいいことだ」


「……」


「折角、"生きる許可”を貰っているんだろう?」


生も死も、全て儚い。


人の命ほど、呆気ないものはこの世にない。


どんな栄華を気づいたとしても、死んでからの方が道は長く険しいのに。