「っ、翠蓮……」


「言い逃れはさせないわよ。家に帰って来れなかったのも、そのせいでしょ?ねぇ、最期の日、父様と言葉を交わしたんじゃないの?父様、何言ってた?ねぇ、兄様……父様を、私たちが救えなかったのは、どうしてなの……」


泣きつくけど、


「…………すまん、言えん」


と、祐鳳は翠蓮を突き放す。


「それをお前に言うのは、酷すぎる……」


(兄様は、何を知ってるの……?)


知りたいけど、知りたくない。


黎祥とのこと以上に、傷つくことがあるの?


「―祐鳳、話していいよ」


暗い顔をした兄を見上げていると、現れたお姫様。


「灯蘭様っ!」


「私のせいで、二人に仲悪くなって欲しくないもの」


兄の焦る声と、落ち着いた灯蘭様の声。


壊れてしまった灯蘭様はどこか落ち着いていて、綺麗に澄んだ瞳を、翠蓮に向けてきた。


そして、綺麗な所作で翠蓮に頭を下げる。


「無知は……罪だったわ。沢山、貴女に助けられたのに、私は貴女を傷つけることしかしていなかった……」


ごめんなさい、と、灯蘭様は涙を零す。


「どういう……」


「私たち兄弟は……本当に、大切なものを奪って……だから、あの人も、また……」


「灯蘭様っ!!」


「だって!……慧秀様だって、祐鳳だって、ずっと、ずっと、傷ついてっ!!このままだったら、みんな、不幸になるでしょう!?」


…………皆、みんな、不幸に…………。