「許可証か」


「すいません」


「いや、私の方こそ、失念していた」


翠蓮を通して親しくなった関係だが、残念ながら、皇帝と一兵士という関係上、そんなに気軽に言葉を交わせない。


灯蘭のわがままに付き合ってくれている彼は、所々で翠蓮と血が繋がっているということを感じさせる人で。


「……灯蘭のわがままを、そなたは叶えてくれているのだな」


「え?」


「護衛。……苦痛ならば、他のものを探すが?」


ずっと、見張りがついている状態。


普通ならば、逃げ出したくてたまらないだろう。


何より、祐鳳の歳だと、そろそろ結婚定齢期である。


けれど、祐鳳は首を横に振って。


「陛下のお気遣いには感謝致しますが……どうやら、自分は灯蘭様のわがままを聞くのが好きなようですので」


いっつも言い合いして、


喧嘩しては、仲直りして。


命を懸けて、灯蘭を守ることを誓ってくれている祐鳳は黎祥が差し出した許可証を受け取ると、


「灯蘭様に、怒られてしまいますね」


と、苦笑した。


―灯蘭が望む結婚は、こういう結婚なんじゃないだろうか。


自分の思うままの道を、


自分の思うまま、歩ける人生。


手に入れられない者もいるのだから、


手に入れることが出来るのなら、兄弟には自由に道を選んで欲しいというのが、黎祥の願い。