いや、ここに彼女を縛り付けるということでさえも、黎祥の本当の望みとは言えない。


今、毎晩のように、寵愛していることも。


全部、全部、違う。


黎祥が望んでいたのは、こんな事ではなく―……。


「―陛下、」


声をかけられて、顔を上げる。


すると、また、別の宦官がやってきて。


「どうした」


「第六皇女付きの護衛が、謁見したいと申し出ています」


と、黎祥に告げた。


(第六皇女……灯蘭の護衛といえば、翠蓮の兄か)


「通せ」


一言告げると、宦官は驚きながらも、彼を導いてきて。


「―偉大なる皇帝陛下、御拝謁を賜り、恐悦至極の……」


「挨拶は良い。で、どうした」


「は。本日より、再び、灯蘭様付に配属されますので、その手続きを―……」


「―ああ」


忘れていた。


祐鳳は一定期間は本来の部署にいたが、今日からは灯蘭の元に戻るのか。


確かに、許可証が必要だ。


黒宵国の後宮は皇帝以外は立ち入りを禁じられているし、皇帝の許可、そして、宦官という付き人がいなければ、見つかった時に重罪とされ、密通容疑で極刑。


だから、正直、栄貴妃の元に通っていた慧秀は警吏の目を掻い潜った優秀な人材というわけで……。